mission2019
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―飛田会長は、東京の家事調停委員を25年間も務められたそうですね。―女学院のもう一つの側面である「女子教育」の存在意義が問われています。   私の女学院時代を振り返ると、飛田とにかくよけいなことに気を遣わなくてよかったという感じです。素の自分でのびのびできて、能力を発揮できる。さらに、祈りの習慣などにより、女学院にいるほとんどの生徒には「神への畏れの気持ち」があるわけです。そういう仲間と青春時代を過ごすことには大きな意味があります。―現代の女子教育や女性のあり方に対してはどのようにお考えですか。中高時代は自由な環境でのびのびと―飛田会長、これからの女学院に望むことはどういったことでしょうか。理想の女性リーダーの「見える化」を飛田    はい。調停委員は、本当にいろんな考えの方とお話をするんです。皆さん、「自分が正しい」というつもりで強く主張なさいます。私たち委員はそれを傾聴するわけなんですが、いろいろな考えを聴かせていただく中では、「自分は流されてはいけない」という立ち位置が大切です。人の意見に簡単には揺り動かされない毅然とした態度は、女学院で育ててもらったのだと感じています。毎日の祈りの時間が自分との対話、神との語らいの時間でした。そうして醸成された自分の考え方を大事にできる。だからこそ、自分以外の一人一人の個性を尊重したいという考えも生まれます。飛田   日本の女性にとっては今もきゅうくつな時代で、「男性は強く、女性はしとやかに」という古い概念に自分をあてはめようとしている女性が多いのではないでしょうか。ですから、中学高校などの学生時代には、古い概念に縛られない、性差を意識しない自由な環境で育つべきだと考えます。十時    女性は、「女性だけの方が活きる、自立できる」と言われる面があるようです。そういう意味でも女子教育の存在意義を感じますね。寺園    女子教育という特殊性においての存在意義もまた、あると思います。阿久戸    女子教育のすばらしさは、女性が「生命を大切にする性」だから再教育ができるという点です。子どもが道を誤っても「立ち直らせ教育」ができるのです。AIは「勝利」や「成功」を中心に求めるでしょう。しかし、「負け」の中にこそ宝があるはずです。そういった意味で女子教育は、AIにはできない人材を育てる教育といえるでしょう。飛田   子育てや仕事をしながら家庭を両立させていく。そのような体験をしている女性だからこそ、人の痛みがわかるということもあるのかもしれません。「産む性」という意味で、聖書でも女性は重要と記されていますよね。寺園   「母親から生まれない男は一人もいない」といった言葉もありますね。飛田   女性にとって今もきゅうくつな時代ではありますが、本当に社会で活躍する女性は、気配りも人一倍あると思います。昔、男性上司にお茶を出す時にも常に工夫をしていたと言います。与えられた環境で、よりよくなるように自分の力を注ぐのですね。飛田    女性のリーダーを育てる教育をぜひお願いいたします。そのためには、リーダーの見本を見せる必要があります。ですから、生徒たちが「ああいった女性になりたい」と思うような先生を育ててほしいと思います。十時    なるほど。女性のリーダーを望むのであれば、女性の教育者を育てる…。飛田    そうです。また、各界で活躍している女性を大学生や同窓生に見せなければならないとも思います。「女学院は女性を大切にしている。ライバルとして尊重して認めている」ということを「見える化」してほしいですね。さらに、女学院が女性にとって居心地のよい職場だということが見えると、ここで働く女性の先生が、理想のリーダーとして生徒や学生たちに見えてくるようになるのだと思います。十時   女性の働きやすい環境についても、女学院で、また社会全体でも考えていかなければなりませんね。今年度のテーマ「Society5.0を見据えた宗教教育・女子教育」は、新たな時代の到来を受けて、女学院の教職員みんなで考えてほしいと思って掲げたものです。これからもみんなで討論し、女学院独自の普遍的な「学びの姿」を求め続けていきましょう。ありがとうございました。School Corporation Fukuoka Jo Gakuin04

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