このようにメリットの大きいシミュレーション教育ですが、今後はAIや介護ロボットの導入などにも対応していく必要があります。AIやロボットは有用ですが、患者の言動の機微までは判断できません。ここで大切なのが「ヒューマンケアリング」の視点です。 ヒューマンケアリングとは、看護を受ける人々を全人的に受け止め、心を込めたケアを行うことを意味します。これを実践できる力が、次世代の看護師に求められます。福岡女学院看護大学では、今後もこういった視点に重きを置きつつ、看護・医療の質を高められる人材を育てていきます。えながら病院を訪れる外国人にとって、不安は増すばかりです。 近年、日本に滞在・居住する外国人が増え、医療の現場でも、外国人患者に適切なケアができる人材が求められています。福岡女学院看護大学の多言語医療支援コースは、そのような社会のニーズに応じた英語力、コミュニケーション能力、多文化への理解力を兼ね備えた、看護識者の育成を目指してスタートしました。今年で2年目を迎えます。学生たちは、将来、外国人の患者さんと接する時に、自信をもって、笑顔で対応できる看護師になってほしいいと願っています。 医療の現場では、どんなにテクノロジーが進歩しても、それだけでは解決できないことが多く存在します。医療の知識や技術に加えて、欠かせない大切な人間育成が、宗教教育だと思います。例えば、チャペル礼拝ではさまざまな人たちの話を聴きます。この「聴く」という経験はとても重要。患者さんやご家族のお話を聴く機会の多い看護職者にとって、人の話に心から耳を傾ける姿勢が大切だからです。 また、他者の言葉を親身に受け止められるようになるためには、看護職を目指す本人の努力だけでなく、自然とそのような心持ちにさせてくれるような環境、空気も必要です。宗教教育は、人を優しく誠実にさせる空気を生み出す「空調設備」であるべきだと思います。イエス・キリストの言葉が醸し出す真実な空気が、いつの間にか学生たちを包み込んでいる。学生たちはその空気を無意識にも吸って成長していく。そんな宗教教育こそ、福岡女学院看護大学ならではの、生涯を通じての、大切な人間育成だと信じています。 外国人である私が、病院にいくと、英語に自信がないのか、看護師の方々が私と目を合わせることを避けているような気がする場面を体験しました。外国人とのコミュニケーションのとり方がわからない。そんな心理から起きる行動だとは思いますが、不安をかか看護大学宗教主事・中高宗教主事代行・チャプレン長金田 俊郎准教授 Mathew Lee PorterSchool Corporation Fukuoka Jo Gakuin女学院ならではの人間性が、医療教育にも生きています。12宗教教育宗教教育が、今こそ大切な、患者に向き合う姿勢を育てます。多言語医療支援コース外国人にも笑顔で対応できる看護師を育てたい。
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