体系的に活用することを可能とする学校アーカイブズを目指す上で、専任教員の採用が不可欠となる。このことは、福岡女学院のブランド力を高めるとともに、大学・短大の学生、中学・高校の生徒への「自校史教育」の中核として学生、生徒のアイデンティティーの醸成に大きくつながるものである。また、近年、地域の歴史や特色とのかかわりのなかで自校の歴史や個性を位置づけ、その研究成果を地域住民に公開している学校アーカイブズも増えている。つまり、学校アーカイブズは、自校の歴史の収集・保存および自校史教育への貢献のみならず、地域貢献にも資することとなる。 このような現状を踏まえて、筆者は、大学の資料収集・保存および体系的な活用に関して先駆的な役割と実績のある九州大学大学文書館の折田悦郎教授(現在、九州大学名誉教授)に寺園喜基院長の特別顧問として就任いただき、意見をお聞きした。その結果、アーカイブズ化を図る上で必要なことは、資料の収集・保存、展示、年史編纂、学院史の研究ができる専門的知識をもった人材の配置が必須であるとのご意見を頂いた。 2017年4月、九州大学大学文書館で8年にわたり九州大学百年史の編纂に従事してこられた井上美香子氏に学院資料室運営の適任者として就任いただいた。同氏は九州大学で博士(教育学)の学位を取得した教育史を専門とする研究者でもある。井上講師は就任早々学院資料室のホームページを立ち上げその存在をアピールし、2019年度には1990年に開学した小郡キャンパスの学生生活をテーマとした特別展示を実施した。さらに、展示室に新たに設けたスペースで福岡女学校時代の学校生活の記録映像や福岡女学院第11代校長の『徳永ヨシとその時代』を上映するなど、来場者にも好評を得ている。 また、戦時中に消失した資料を補完するため、卒業生や元教員へのオーラルヒストリーを実施するなど、活発な活動を展開している。 5.150年史の編纂にむけて 福岡女学院は2035年に創立150年を迎える。学院ではこの年に創立事業の一つとして150年史を編纂することを計画している。 しかし、戦災の影響で学院に関する戦前の資料はほとんど残っておらず、学院の理念の根幹にかかわる宣教師関係の資料も焼失している。この問題を克服して150年史を編纂するために、現在、学院資料室と学院キリスト教センターとの共同でこれらの資料の収集・調査にむけ検討をすすめている。 なお、福岡女学院ではこれまで、5年毎にその歩みを年史としてまとめてきた。今年、福岡女学院は創立135周年を迎える。そのため、2015年度から2019年度の5年間の学院の出来事をまとめた135年史の編纂にむけ、現在、学院資料室ではその準備に取り組んでいる。 本稿では、学院資料室の歩みを振り返り、これまでの諸活動について紹介した。学院資料室の活動について、今後も皆さまからのご協力を頂ければ幸いである。 福岡女学院資料室設置の経緯と現在の活動 (左から事務職員の中村さん・井上講師・筆者) 3 福岡女学院資料室ジャーナル 創刊号 (2020年) 展示室の入口にて
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